「脊椎分離症」は、分かりやすく言えば、椎弓の一部が骨折を起こし、分離した状態をいいます。椎骨は、前方(おなか側)の椎体と、後方(背中側)の椎弓で成り立っています。椎弓は、上下にある椎弓とそれぞれ組み合わさって椎間関節を構成しています。その椎間関節の、上関節突起と下関節突起の間が骨折し離れてしまうのが、脊椎分離症です。昔は先天的な異常と考えられていましたが、現在は、腰に負担がかかるスポーツを続けて行うことでストレスが重なり、疲労骨折を起こしたと考えられています。とくに成長期、発育期にはげしいスポーツをした人に多く、10代から症状が見られます。腰が痛むのは、第4、5腰椎やその下の仙骨の間など、下部腰椎がほとんどです。さらに分離した部分が前方へすべり出してしまうことを、「脊椎すべり症」といいます。
後ろにそる姿勢をとる、長時間立ったり座ったりしていると痛みが出ますが、脊椎分離症だけの場合は、必ず痛みを起こすとは限りません。脊椎すべり症になると、重苦しい腰の痛みで始まり、症状が進行すると足の痛みやしびれ、坐骨神経痛をともなうことがあります。さらにすべりが大きくなると、「腰部脊柱管狭窄症」の症状が出ることもあります。
痛みが強い場合には安静にして痛みやしびれをとりのぞきます。脊椎分離症を初期の段階で発見すれば、コルセットを装用し、3カ月ほどで骨がくっつくこともあります。ほかに消炎鎮痛剤などを用いる薬物療法や、温熱療法、神経ブロックなどを行って様子を見ますが、症状が慢性化している、脊髄が圧迫されている、日常生活に支障があるという場合には手術が行われます。