姿勢の悪さは、見た目が悪いばかりではなく、さまざまな体のトラブルの原因になります。たとえば腰痛や肩こり、背中の痛み、片頭痛などがそうです。背中を丸くしていると、腰や肩などの筋肉によけいな負担がかかり、痛みが発生してしまうのです。
そこで姿勢を矯正しながら、腰痛、肩こり、片頭痛、背中の痛みを改善する方法が、おなか呼吸歩きです。おなかでの呼吸、つまり複式呼吸をしながら歩く方法で、ポイントが2つあります。
(1)息を吸うときはすばやく鼻から大きく吸う。吐くときは、口をすぼめてロウソクの火を吹き消すように、ゆっくり吐く。
(2)常におなかの中まで息を吸い込み、吐くときは、おなかにたまっている空気をすべて吐き出すつもりで意識的に呼吸する。
おなか呼吸は横隔膜を動かすことが不可欠なので、背すじがピンと伸びていないと正しくできません。横隔膜とは胸と腹の境目にある膜のような筋肉のことで、背中を丸めると胸と腹が圧迫され、横隔膜が動かしづらいのです。最初のうちはおなかに手を当てて、おなか呼吸が正しくできているかどうかを、確かめながら歩くといいでしょう。動いていれば、おなか呼吸ができている証拠です。
おなか呼吸歩きは、20~30歩やるだけでも十分に効果があります。毎日つづけるとしだいに習慣になり、背すじが伸びていくのです。通勤、通学、買い物の途中でも簡単にできますし、雨の日は家の中でやってもいいでしょう。
(東京学芸大学教育学部教授 宮崎義憲)
ゆっくりと鼻から2回息を吸って、口をすぼめてロウソクの火を吹き消すように、ゆっくり3回吐く。目安は20~30歩。