背骨は1本の長い骨ではなく、椎骨と呼ばれるサイコロ状の骨が24個積み重なり、ゆるやかなS字状のカーブを描いていますが、その背骨が骨盤の上に立っていられるのは、椎骨の両端についている筋肉が背骨を一つにまとめ、支えているからです。背筋や筋肉は、このようにたいせつな働きをするとともに、おなかの内側の圧(腹腔圧、胸腔圧)を保つことにより、背骨を衝撃から守っています。背筋や腹筋の働きが弱まれば、背骨の中で最も負担の大きい腰椎を痛めやすくなるのは当然といえます。
骨盤は正常な状態では、地面に対して30度ほど前傾していますが、その傾斜角度がふえたり減ったりすると、バランスをとるために背骨のカーブのあちこちにゆがみが生じ、これらも腰痛の原因となるのです。
腰痛は、患者さん自身が背骨の土台となる骨盤の角度を正し、背骨の支えとなる筋肉を強くすることに努めなければ、なかなかよくなりません。そこで、患者さんが自分の力で腰痛を治すために考案された「腰痛体操」を紹介します。
簡単な三つの動作からなる体操ですが、腰を動かすだけではなく、ふだんあまり使わない筋や腱を伸ばし、骨盤の角度を矯正する全身運動に重点をおいています。また、呼吸運動をとり入れていますので、腹腔圧や胸腔圧を高め、背骨の守りを固める効果もあります。腰痛に関する限り、体操はりっぱな治療法です。回数はご自身の腰の状態に応じ、無理のない範囲で毎日実行してください。
(城南病院院長 石塚忠雄)