腰をあたためる温熱療法は、病院でも盛んに行われている腰痛の治療法の一つです。赤外線やホットパックのほか、最近では腰を深部からあたためる効果のあるマイクロウエーブ(極超短波)療法や超音波療法などが試みられています。こうした温熱療法を家庭でとり入れる際のコツは「乾熱」と「湿熱」をうまく使い分けることです。乾熱がカイロや電気アンカ、赤外線など、乾いた熱源であたためるのに対して、湿熱は文字どおり湿った熱を加えることで、蒸しタオルや入浴などがこれにあたります。入浴の例でもわかるように、湿熱は乾熱よりも患部を芯からあたためて、血行をよくする効果が期待できます。
筋肉疲労からくる腰痛はもちろん、椎間板ヘルニアや座骨神経痛なども、腰に蒸しタオルを当てて、湿熱であたためてやるのが効果的です。
ただし、注意しなければならないのは冷えを伴う腰痛で、湿熱は逆効果になりかねません。あたためたあと、蒸気が乾く際に気化熱を奪われ、かえって腰を冷やすことになるからです。夏場に冷房で腰が冷えて痛む場合などがその典型で、こうしたときは、使い捨てカイロを用いて、乾熱で腰をあたためるのが有効です。
(永井秋夫)