指圧や鍼灸の治療では腰痛のタイプや症状に応じ、いくつかのツボを組み合わせて使いますが、どんな腰痛にも効きめを発揮するのが「腎兪」と呼ばれるツボです。東洋医学では、五臓(肺・心・肝・腎・脾)六腑(大腸・小腸・胆・膀胱・胃・三(さん)焦(しょう))を養う気(生命エネルギー)の通り道が人体を走っているとみて、これを「経絡」と呼びます。腎兪はこのうち、膀胱経の上にあるツボです。また、五臓と六腑の間には陰陽の関係があるとも考えらており、治療点を選ぶとき、この関係を利用する場合があります。腎と陰陽の関係にあるのが膀胱であり、経験的に膀胱経で腰痛に効くツボが、腎兪とされているわけです。 ウエストに両手をあてがい、腎兪の位置を確かめてみましょう。このとき親指だけが背中側にくる形になりますが、親指でぐりぐり押すと、左右の肋骨の下端にふれると思います。その肋骨の両下端を結んだ線が背骨とぶつかる交点(おへその真裏)から、左右へ指幅2本分戻ったところが腎兪です。
腰に痛みがあるときは、腎兪の付近を押さえると骨ではないかと思うほど、かたいしこりができています。腰が痛いときにこぶしでたたくのは、腎兪のしこりをほぐそうとする、自然な反応なのです。どうせたたくとのであれば、正確な位置をたたいたほうが効果もより期待きでるというものです。こぶしのとがったところが腎兪に当たるよう、体に響くくらい少し強めにたたきます。左を1~2分たたいたら、右も1~2分。これを1日2回以上行うのを習慣にするといいでしょう。
また、夫婦などでお互いに指圧をするときは、指圧をされるほうはうつぶせになり、左右の腎兪を親指の腹で10~20秒強く指圧しては10秒休み、また指圧するという要領で10~20回繰り返してもらいます。それでも効きめが弱いときは、お灸がおすすめです。米粒の半分ほどの量のもぐさをひねって、円錐形にします。もぐさが倒れないよう底を少し湿らせて腎兪にのせ、線香の火をつけます。1日5~7壮、毎日すえればガンコな腰痛もやわらいでくるでしょう。
(神宮前鍼療所院長 岡田明祐)